裏側で満たす

時空を超え、共鳴するアートがここにある。オマージュアートプロジェクト『ECHOES OF ART』、始動

2024.10.27
  • 鈴木 樺恋

  • オバラ ミツフミ

  • でみたす!編集部

目次
INFORMATION
R11R
オウンドメディア『でみたす!』
本記事は、麻生台ヒルズ4F大垣書店で開催されたオマージュアートプロジェクト『ECHOES OF ART』の第一弾「オマージュ北斎」についてのレポート記事です。

過去の巨匠たちの声に耳を傾け、その響きを現代のキャンバスへ——。


絵画・イラスト・マンガといった異なる分野の現代アーティストたちが、過去の巨匠のオマージュ作品を制作するプロジェクト『ECHOES OF ART』をご存知でしょうか。


立ち上げたのは、実業之日本社、サン・アート、そしてR11R。専門性の異なる3社だから実現した、アートの新たな地平を拓くプロジェクトです。


第一弾のテーマは、江戸時代を代表する浮世絵師・葛飾北斎。北斎の作品をオマージュしたものはもちろん、北斎自身を描いた作品が制作されるなど、クリエイターの個性が光る展示として話題を呼んでいます。


先行抽選販売と大垣書店麻布台ヒルズ店での展示の終了が迫るなか、少しでも多くの方に魅力を届けたい『でみたす!』編集部は、独占インタビューを実施。担当者に聞く『ECHOES OF ART』誕生経緯から、アーティスト本人による愛に溢れた作品解説まで、イベントの魅力がギュギュっと詰まった情報をお届けします。

過去と現代が交差する、アートの新境地

最初に『でみたす!』編集部がお話を伺ったのは、『ECHOES OF ART』を主催・共催する実業之日本社の国見さん、サン・アート社の西村さん、R11R代表柿坂さん。

プロジェクトを立ち上げた経緯に始まり、長年アートに向き合ってきたプロフェッショナルたちから、『ECHOES OF ART』がさらに楽しくなる裏話も聞くことができました。

———— 多くの方が『ECHOES OF ART』を楽しまれていますね。そもそも、どのような経緯でプロジェクトが立ち上がったのでしょうか。

国見:日本におけるアートの関心は、年々高まりを見せています。しかし、アート作品に触れる機会は、初心者には挑戦しにくい環境であるのが現状です。

アートをもっと身近な存在にしていきたい。既存作品の鑑賞に留まらず、新しいアートの形を創造したい——。どうすればいいのかと思考を巡らせた結果、生まれたプロジェクトが、巨匠の声に耳を傾け、現代のクリエイターが呼応する『ECHOES OF ART』です。

『ECHOES OF ART』とは、漫画・イラスト・マンガといった異なる分野の現代のアーティストたちが、世界的に知られる作品をオマージュする企画です。

『月刊美術』の発行元として50年以上のお付き合いがあるサン・アートさんと、新進気鋭のクリエイターが数多く所属するクリエイティブ・スタジオのR11Rさんにお声がけし、これまでにないプロジェクトがスタートしました。

———— R11Rとのコラボレーションは、『ECHOES OF ART』が初めてだったんですね。

国見:会社としては、以前、文芸作品の装画制作でご一緒していた経験はありましたが、今回のような取り組みははじめてです。池袋PARCOの全館ジャックのアート企画など、新しくてカッコいい取り組みに積極的に取り組まれている印象がありました。

———— 今回のテーマは「北斎」です。数多くの巨匠のなかから、なぜ「北斎」を選択されたのでしょうか。

国見:みんなが知っていて、かつオマージュの可能性が一番広がると感じたのが「葛飾北斎」だったんです。

彼の大衆的なイメージとしては浮世絵ですが、実はその他にも、版本の挿絵から春画まで多岐に渡って作品を残してきました。

その手法の多様さが、異なるクリエイターが同一テーマで描くという方向性にピッタリだと感じたのです。

ジャンルを超えて集結した、三者三様の葛飾北斎

———— 今回は、そうそうたるメンバーが選出されています。どのような基準で、参加するアーティストが選ばれたのでしょうか。

国見:漫画的表現で、北斎を表現してくれる方を中心に選びました。また、漫画家さんが一点ものの作品を売る機会はなかなかありません。今回が初めてのアート作品発売となる作家さんもいます。

西村:SNS活動を活発にしている方を中心に選出しました。実際に作品を鑑賞できる場、購入できる機会としての『ECHOES OF ART』です。ファンの方々に一人でも多く来場していただきたく、今回の選出となりました。

柿坂:北斎のイメージに合っていると感じた方々にご参加いただきました。イラストレーターの個性と、北斎の作品がうまく科学反応を起こせたと思います。

———— 実際に作品が出揃ってみて、クリエイターの個性を感じた瞬間はありましたか?

西村:漫画家、画家、イラストレーターで、それぞれにアプローチの仕方に個性がありましたね。そもそも「葛飾北斎」への向き合い方が違いました。

漫画家は、「葛飾北斎」を作品に組み込もうとするのです。日頃から人物をキャラクターとして落とし込む作業をしているので、自然とそうなるのでしょうね。

画家の場合、自身の作風で「葛飾北斎」を再解釈しています。単なる模倣で終わらせず、自分なりのテーマとして昇華しながら描き上げている印象がありました。

反対に、イラストレーターは「葛飾北斎」になりきろうとする気概が、作品から滲み出てきています。葛飾北斎に憑依しているような、探究心が感じられました。

みなさん「描く」仕事をされていますが、仕事の仕方も描き方も、さまざまなんですよね。普段は漫画を読んでいる方も、画家の作品にのめりこめると思いますし、普段は画家の作品を楽しんでいる方も、イラストレーターの作品から気付きを得られると思います。

リアル展示の会場となった大垣書店では、そうしたジャンルの垣根を超えて作品が集まりました。こんな空間を楽しむ機会はそう多くないので、ぜひ会場に足を運んで、アーティストたちの個性を感じてほしいと思っています。

———— 最後に、ご来場者様へのメッセージをお願いします。

国見:好きな漫画家さんの作品を通じて、画家さんの作品を知る。同じように好きな画家さんの作品を鑑賞して漫画家さんの作品を知る。異なるジャンルで活躍をする作家さんが集まったからこそ起きる反応を楽しみにしています。

西村:クリエイターさんたちにとっても、ご来場者のみなさんにとっても、初めての体験の場になると感じています。ぜひ、より多くの方に、過去と現代が織りなすアートの響きを感じていただきたいです。

柿坂:イラストレーターたちが、「北斎とは」を調べるところから始まったこの企画。イラストレーターの知見も広がるいい機会になったと感じています。みなさんの「好き」の幅も広がる機会になると思うので、ぜひ足を運んでいただきたいです。

それぞれの“オマージュ北斎”を独占取材

アートのビギナーは鑑賞にも作品購入にも勇気がいると思うかもしれませんが、漫画やイラストといった馴染み深い存在とコラボレーションしているとなると、話は違ってきます。

身近なものから世界を広げられると考えると、足を運んで話を聞いてみたくなってきますね……。

ということで、今回は『でみたす!』編集部は、『ECHOES OF ART』に参加したアーティストさんに直接お話を聞いてきました。

みなさんは、巨匠の作品をどのように解釈し、どのようなアウトプットを創り出されたのでしょうか……?

漫画家・うめさん(小沢 高広さん、妹尾 朝子さん)

初めて「コマ」からハミ出したのは北斎だった!?

妹尾:「うめ」として一点ものの作品を発売するのは初めての試みです。葛飾北斎本人をテーマに、作品を描き上げました。

葛飾北斎という人物は知っていても、顔や佇まいだけで「北斎だ」と認識できる人は少ないと思います。どうしたら一目で「葛飾北斎」だと理解していただけるか、試行錯誤を重ねた結果、「神奈川沖浪裏」と「コマ」の表現に辿り着きました。

小沢:漫画家の性かもしれませんが、私たちはどうしても、キャラクターとしての北斎を描きたくなるんですよね。どうしたら画面を通して、葛飾北斎の生き様を伝えられるかを探究してしまう職業なんです。

妹尾:コマからはみ出るダイナミックな手法は、実際に北斎が「北斎漫画」という画集で使用していた表現です。同じ漫画家として使わずにはいられず、作品にも取り入れました。

小沢:ちょうど新作漫画『南緯六〇度線の約束』を発売したタイミングで、このようなお声がけしていただき、嬉しかったです。どちらの作品も「うめ」の新境地を表現できた作品ですので、ぜひご覧ください。

日本画家・溝口まりあさん

北斎への尊敬と敬意を込めて

溝口:今回は『富士越猫図(ふじこしびょうず)』『グレートウェーブ』『快晴』の3作品を制作しました。「オマージュ」であって「模倣」でない作品づくりに、はじめは苦戦しました。実際に北斎の作品を鑑賞したり、オマージュのあり方を探っていくなかで、“自分が北斎だったら”を表現することに決めました。

1枚目の『富士越猫図(ふじこしびょうず」)』は、原作『富士越龍図』では、晩年の北斎のもどかしさを表現するが如く、沸き立つ雲のなかを懸命に昇る龍の姿が描かれています。

私も、その姿から天高く伸びあがる猫を描こうとしたのですが、描き進めていくうちに画面のなかの猫が動き出してしまって(笑)。

最終的にはどっしりと自信ありげに佇む姿に落ち着きました。本来雲だったところが尻尾になっていたり、構図が少しずつ異なっていたりと、原作との違いも楽しんでいただける作品になっています。

『グレートウェーブ』では、「私が波だったら、いったいどんな波になるだろう」と想像しながら描き上げました。原作の『神奈川沖浪裏』は、北斎自身が何度も何度も描いてきた「波」がモチーフ。このかたちで現代に残るまでに、たくさんの試行錯誤があったのだろうと思います。

波の表現で北斎に挑戦するというよりは、私自身が波となって、北斎の世界を駆け巡りたい。そんな気持ちで制作に取り掛かりました。実は、波の部分は全て一発描きです。

『快晴』では、原作の藍の色合いに感銘を受けたので、より青の表現を探究した作品にしました。背景には「ベロ藍」と富士の姿取りには「インミンブルー」という、どちらも最先端の画材を使用しています。

北斎が『凱風快晴』を描いたとき、ベロ藍は最先端の画材でした。せっかくオマージュさせていただくからには、私の時代の最先端を取り入れなければと思い、使用させていただきました。

今回の作品たちも、とても素敵に仕上がったと思います。ぜひ、みなさんにも作品を見て、思い思いの楽しみ方を見つけてほしいです。あなただけの発見を、ぜひ私にも教えてくださいね。

イラストレーター・Kouさん

北斎的デフォルメの妙を現代に!

Kou:今回は北斎の『釈迦御一代記図会』の挿絵をオマージュして、「鬼」を描かせていただきました。オマージュ作品を制作するのは初めてでしたが、北斎へのリスペクトと自分の色が共存した作品に仕上げられたと感じています。

私は普段、架空の存在を描くときでも、デッサンの正確さを意識しています。ですが、北斎の作品には、デッサンの正しさよりも、デフォルメされた美しさを感じていて。それもあり、「正しい」だけじゃない、デフォルメで魅せることをコンセプトに制作しました。

実は額縁にもこだわっていて、光が当たると薄く光るようになっています。北斎の模倣ではなく、今の時代だからこそできる表現方法を探究できたのではないかなと思います。

今回は15名のアーティストが参加していますが、そのどれもが個性に溢れた作品です。お気に入りの「オマージュ北斎」を見つけていただけると嬉しいです。

開催期間は残りわずか、この瞬間を見逃すな…!

異なる職種のアーティストたちが、「北斎」を描く——。

どの作品にもそれぞれの「北斎」を感じ取ることができ、過去と現代が呼応し合う空間は、まさに『ECHOES OF ART』と呼ぶに相応しい場所でした。

会場となった大垣書店さんも、書店という枠を超えた、アートギャラリーのような空間です。書籍特集を眺めたり、併設のカフェでのんびりしたり、ついつい長居してしまう心地良さでした(編集部・鈴木は2時間ほど滞在)。

写真投稿で、5000円分の図書カードが当たる太っ腹なキャンペーンも実施中。奮ってご参加ください!

『ECHOES OF ART』で展示されている作品は、全て「月刊美術プラス」で抽選販売されています。お目当てのあの作品や、心射抜かれたあの作品を、手元に置く選択をしてみませんか?

展示は10/30(水)まで。アートが共鳴する姿を、ぜひみなさんも会場で体感してみてください。

ECHOES OF ART『オマージュ北斎〜』開催概要

▪︎特設WEBサイト

http://www.gekkanbijutsu.co.jp/echoes/

  • 先行抽選販売締切
    • 2024年10月30日(水) 17:00
  • 当選結果発表
    • 2024年10月31日(木)15:00
  • 継続販売
    • 2024年11月1日(金)〜12月20日(金)17:00

▪︎作品展示

会場:大垣書店 麻布台ヒルズ店

会期:2024年10月14日(月)〜10月30日(水)

鈴木 樺恋

『でみたす!』プロジェクトマネージャー・編集者。コンテンツの企画・製作を担当。画塾で絵を学んだ経験から、「描く側のニーズも満たすコンテンツづくり」を目指しています。

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