池袋PARCOと言えば、都市型商業施設の枠組みを超えた多彩な「体験型コンテンツ」。多様なカルチャーが交差する街・池袋で、訪れたお客様にたくさんの新しい出会いを提供しています。 そんな池袋PARCOがR11Rとコラボし、3年連続で開催されている全館アート企画「Emotions」。毎年180名以上のクリエイターが参加する大規模イベントですが、当初の企画では参加クリエイターは30名が限界と言われていたそう。 「Emotions」はどのようにして、多数のクリエイターを動員する全館イベントとなったのか。今回は「Emotions」誕生秘話から、開催で得た反響、今後の池袋PARCOの展望までを、池袋PARCOスタッフである根本さん、金子さん、そしてR11R代表柿坂の座組でたっぷりと伺いました。 |
池袋PARCOをアートでジャック
———— 「Emotions」シリーズ3年目となる「Emotions2024」も大盛況だったようですね!そもそも、「Emotions」プロジェクトはどのようにして発足したのでしょうか?
金子:2022年、池袋PARCOで「ONLINE PARCO」を動かそうという話が出ていました。その為に、新しい営業企画を打ち立てる必要があったのです。
池袋という街は、マスカルチャーとサブカルチャーが交差する、エンタメカルチャーのメッカです。池袋PARCOとしても、この街で新しいカルチャーの発信地になりたい。
そう考えた時、SNSで活動するフレッシュなクリエイターを集めて、訴求力の強いコンテンツを制作しようと考えたのです。
リサーチを重ねていくうちに、tamimoonさんなど才能に溢れるクリエイターが多数在籍するR11Rさんの存在を知り、前任の担当者がアポを取ったことがはじまりでした。
柿坂:ただ、初めてお話をいただいた時の内容は、単にクリエイターの作品をオンライン上で販売するといったものでした。
せっかく池袋PARCOさんとお仕事ができるのに、それではまったく面白くないと思って。やるなら心踊るものをと思い、私がずっと脳内で温めていた「館ジャック」を提案しました。
池袋PARCOをまるっとアートでジャックして、会場全体がプロモーションになる。想像しただけでも、斬新な企画になるだろうと思いました。
———— 「館ジャック」なんて、池袋PARCOにとっても、前代未聞の企画だったのでは?
金子:発足した当時は、館内で広告として利用できる面が、わずか30面しかありませんでした。当然、参加できるクリエイター数も30名が限界だと、柿坂さんにご連絡したんです。
すると、柿坂さんが実際に館のなかを調査してくださって。ポスター拠点として使用していた場所など、思わぬ箇所に掲載スペースを発掘していただきました。
自社で考えていた計画よりも、R11Rさんと動き出してからどんどん展開の幅が広がっていったのは、嬉しい誤算でしたね。
何より、館内を丸ごと演出するためにはリソースをかなり割かなければいけないなかで、R11Rさんが施工からクリエイターのアサインまで全て行ってくださったのが助かりました。
柿坂:正直、施工もクリエイターのアサインも行える会社は、R11R以外ないと思います。
僕が施工の知識を持っていなかったら、媒体の数を増やす発想にすら、ならなかったと思うんです。その点では「Emotions」自体、再現性のないイベントなのかもしれません。
調査や協議を重ねた結果、最終的に使用できる広告面の最大数が「183面」だったので、初回の開催は「Emotions 183」というネーミングでスタートしました。
開催で感じた「win-win-win」
———— そんな由来があったのですね。「Emotions」というプロジェクト名にはどのような意味が込められているのでしょうか。
柿坂:人によって解釈が広がる言葉だと思ったんです。ひとくちに「Emotions」といっても、明るいイメージを想起する人もいれば、暗くてどんよりしたイメージを浮かべる人もいるでしょう。
イメージの振り幅は、イラストの振り幅に繋がります。同じテーマでも、クリエイターによっては真反対のイラストが生まれたり、どんなイラストでも「Emotions」に帰結させたりすることができる。
クリエイターの自由度を上げると共に、お客様にも一枚一枚が新鮮で「Emotional」な体験を味わってもらいたく、「Emotions」に決定しました。
———— 実際に開催してみて、反響はいかがでしたか?
根本:カルチャーの発信地としてのブランディングは間違いなくできたと思っています。
イラストの完成度や視覚的なボリュームも相まって、お客様からの反響も大きく、私たちとしても手応えを感じる初回でした。
参加クリエイター数が多ければ多いほど、作品全体のクオリティの維持は難しくなります。Emotionsに参加したクリエイターの皆さんは、漏れなく全員、素敵な作品を提出してくださりました。これも、クリエイターさんとR11Rさんが、しっかりと連携してくださったおかげです。
柿坂:大人数のクリエイターを一社でアサインできる点は、R11Rの最大の強みです。EmotionsはR11R初めての大規模イベントだったのですが、自社の強みを遺憾無く発揮できたイベントだと思います。
また、乗降者数世界第3位を誇る都市・池袋に一ヶ月間イラストが掲載されたことで、クリエイターにも私たちにも、非常に大きな出目をつくることができました。家族に展示を見せることができたなど、クリエイターの嬉しい声も多数上がっています。
実際にEmotionsの開催で繋がった案件も多いので、三者win-win-winの開催だったのではないでしょうか。
課題の数はアイディアの数
———— 素晴らしいですね!反対に、開催で感じた壁やハードルはありましたか?
根本:準備段階の話にはなりますが、館で行う上での物理的なスペースの確保は、当初からの課題でした。
拠点をどこに設置するかから、掲載可能な素材の選定まで。館のルールとイベントのクオリティのバランスを探る作業は、1回目2回目の開催でとても苦労したポイントですね。
また、近隣ショップの理解という精神的なハードルもありました。やはり、掲載場所によっては、ショップに向けられるはずの「目の導線」を奪ってしまう恐れがあったのです。
ただ、それは毎年の開催で調整を重ねていますし、「Emotions」の知名度が上がるにつれて、理解度も上がっている実感があります。
柿坂:掲載場所の確保は毎年感じている課題でもありますね。Emotionsの規模は、初回は183名だったものが、2回目は200名、3回目は216名と、回を増すごとに大きくなっています。
今年は新しくサイネージを導入することで参加人数を増やしたのですが、来年も同じ手法を採用するかと言われれば、掲載時間など、様々な課題が残っています。
やればやるほど見える課題の数も、こうすればよかったと思う反省も増えていくのですが、現場での経験をバネに、毎年アップデートした「Emotions」の姿を見せたいです。
———— 直近の「Emotions2024」ではどんなアップデートが為されたのでしょう?
柿坂:今まではテーマが「emotional」だけだったところ、任意でサブテーマの「LINK」を追加しました。
池袋PARCO55周年のテーマである「LINK」を取り入れたのですが、想像を超える数のクリエイターさんが協力してくださって。フロアの雰囲気や設備を「LINK」させた、一体感のある展示を実現できました。
今年は特に、新たな試みをしようという動きが運営陣のなかで強かったので、たくさんの挑戦をした回だったと思います。
根本:今回初めて開催したワークショップも好評でした。
館として今までのイベントで学んだ知見をお伝えし、R11R側ではクリエイターが参加可能なイベント内容を共有いただくことで、トレンドを掴んだワークショップの開催に踏み切れました。
ありがたいことに「教えないワークショップ」は、チケットが完売するほどの繁盛ぶりで。チームで作り上げた挑戦が実を結んだことは素直にとても嬉しかったですね。
柿坂:ワークショップに関しては、積極的に池袋PARCOさん側が提案してくださって。実際にPARCOに身を置いている方の意見やアイディアがいただけるのはとても有り難かったです。
運営陣でこまめにコミュニケーションを取れていたおかげで、魅力的なアップデートが実現できました。
アートを愛する者同士の信頼
———— 「Emotions」シリーズは3年連続開催されていますが、池袋PARCOのイベントとして3年連続開催はよくある事例なのでしょうか?
金子:実は、池袋PARCOで3年連続で同じイベントを開催するのは、なかなかのレアケースです。
毎年開催が決定する背景には、ひとえにR11Rさんが真摯にクリエイターや池袋PARCOに向き合ってくれた、確かな実感があるからだと思います。私たちがやりたいと言ったアイディアは実行する方向で考えてくれますし、想定外に決してNOと言わないんですよね。
R11Rさんが真摯に対応してくれるから、私たちも柔軟に対応したいですし、信頼関係が良い相乗効果を生み出しての「今」なんだと思います。
———— パートナーとしての信頼関係が3年間で構築されているのですね。
根本:R11Rチームの森さんとは、年齢も近くお友達感覚でよく話していました。立ち話していてポンと出た案が本当に実現できたりもして。
「R11Rさんならやってくれるかもしれない」というワクワク感が、常にありましたね。やっぱり、根底にイラストを愛する方々という認識があるからこそ、安心してコミュニケーションが取れたのだと思います。
柿坂:クリエイターの方々は、私たちの言葉以上に、クライアントさんからいただく褒め言葉が自信に繋がったりします。池袋PARCOさんはいつもクリエイターさんを褒めてくれるので、クリエイターからの反響もすごく良いんですよね。
開催を重ねていくごとに、参加者全員のモチベーションが上がっているので、良い温度感で来年に向けて動けていると思います。
———— 最後に、こうした取り組みのなかで池袋PARCOが目指す未来の姿について教えてください。
根本:アートが身近にある「非日常」を「日常」にしていきたいです。アートって、好きな人と興味が薄い人で、触れる機会が格段に違う存在だと思います。
アートを見たことがない人も、アートなんてと思う人もいるなかで、池袋PARCOが良いアートに出会う機会をつくれたら。きっかけ次第で、人々の心はもっと豊かになれると思うんです。
55周年を迎えた池袋PARCOですが、これからもビルとして変化し続けますし、多彩なジャンルのコンテンツを扱っていく予定です。
「ますます好きなものを好きと言える場所へ」。
カルチャーの発信地として丸ごと愛される建物を、池袋PARCOはこれからも目指します。