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【9割が“音アリ”派!】イラスト制作を左右する「作業用BGM」のリアルな事情

2025.04.11
  • 虎硬

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  • 『でみたす!』編集部

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でみたす!編集部
本記事は、R11Rパートナーシップを結ぶ174名のクリエイターから寄せられたBGMハックを元に、クリエイターに合った音環境について考察した記事です。

あなたは作業をしながら音楽を聴いているでしょうか。もしくはテレビやYouTubeを流したり、なんらかの音を取り入れているかもしれません。R11Rが登録クリエイターに作業用BGMに関するアンケートを行ったところ、174名の回答があり、9割以上がなんらかのBGMを流していることがわかりました。

■ R11Rが登録クリエイターに行ったアンケート:BGMは「ほぼ必須」?

回答者は主にイラストレーター・漫画家・アニメーターなど多彩なビジュアル系クリエイター174名です。調査結果をざっくりまとめると、以下のような傾向が浮かび上がりました。

作業中に何らかのBGMをかける人は約9割以上。
完全に無音で作業するという人はごく少数でした。ラジオ、音楽、YouTube、テレビ、アニメなど形はさまざまですが、とにかく“何かしらの音”を流しているという人が圧倒的多数です。
歌詞のある曲派 vs. インスト(歌詞なし)派の分かれ目は「作業の集中度」。
大ラフや下塗りのように「単純作業寄りな工程」なら、自分の好きな歌詞付きの曲やPodcastを流す人が多い一方、資料集めや細部描写のように頭を使う工程では「インストか環境音だけにする」「静かな曲に変える」といった切り替えをしている人も目立ちました。
アニメ・映画を“ながら視聴”するかは意見が真っ二つ。
「映像があると目が奪われて全然進まない」「セリフを追ってしまってダメ」という方もいれば、「既に観た作品ならBGM代わりに流しておける」「好きなアニメを流しているとリズムよく進む」という声もあり、人によって大きく分かれました。
アンケート結果からは、イラスト制作=長時間の作業になりがちで、その間に退屈を紛らわせたり気分を上げたりするツールとしてBGMを利用している、という実態が見て取れます。とはいえ「個人差は大きい」ことも明確で、最適なBGMは人それぞれ。結局は、自分の性格や工程に合わせた“音の選び方”が鍵を握るようです。

■ 作業内容別:本当に「適切な環境音楽」は変わる?

イラストの構図やコンセプトを考える段階は、情報をインプットしながら頭で組み立てる必要があります。たとえば「資料を見てポーズを考える」「セリフや設定をチェックする」など、脳が言語的思考をフル回転する場面も少なくありません。
こうした思考系タスクでは、歌詞のある曲や会話音声はどうしても注意を奪いがち。実際、いくつかの研究でも「歌詞付きの音楽をかけながら勉強や文章を読むとパフォーマンスが落ちる」との結果が報告されています。これは、脳が同じ言語領域を取り合ってしまうため。どうしても情報が頭に入らなくなったり、アイデアが出にくくなったりするわけです。
アンケートでも「発想フェーズは無音かインストだけ」「ボリュームを極力小さくして雑音を減らす」という声が多く、「ラフ段階のBGMはむしろ最小限にする方が集中しやすい」という見解が一定数得られました。

■ 科学的にはどうなの?:BGMと集中力・創造性の関係

ここで少しだけ、音環境と集中力に関する科学的な裏付けを見てみましょう(※R11R調べとは別に、脳科学や心理学分野の研究を参照)。

歌詞付きの音楽は読解や暗記を阻害しやすい
一般的に、歌詞やセリフのある音源は脳の言語処理に干渉し、インプット系タスクを妨げるという報告が複数あります。イラスト制作においては、資料読みやテキスト作業が多い工程では要注意です。
ハッピーな音楽は発散的思考を促すことも
一部の実験では、明るく快活な音楽が創造的発想(いわゆる「アイデアの幅を広げる力」)を高めたとの結果も。とはいえ重めのクラシックや激しすぎるロックでは逆効果のケースもあり、最適な曲調には個人差があるようです。
雑音ゼロがベストとは限らない?
完全な無音より、カフェ程度の“程よい雑音”がクリエイティブタスクにプラスだったという研究もあります。低めのBGMや環境音が雑念をブロックし、“ちょうど良い集中状態”を生むとする説です。
ただしこれも全員に当てはまるわけではなく、内向的な人は刺激に弱く「静寂を好む」傾向が強いなど、性格による違いがあると考えられています。

■ 描き手による差:あなたは「音が欲しい派」?「無音派」?

R11Rのアンケートでも、背景にあるのは個々人の性格や集中のスタイルだという声が多数ありました。具体的には外的な刺激によるモチベーションの違いです。

刺激がモチベーションになる
大勢の雑談が飛び交うカフェでも心地よく作業できたり、アップテンポな音楽でテンションを上げるほうが捗る人もいます。むしろ静かすぎると落ち着かないというケースも。
刺激が集中力の妨げになる
強い刺激が苦手で、少しでも騒がしいと注意がそれやすいタイプ。無音や静かな環境音がベストで、歌詞のあるBGMは集中を乱す原因になることが多いようです。「人の声」自体が気になってしまうので、ノイズキャンセリングヘッドホンやインスト曲が重宝します。
もちろん「外向的=絶対騒音OK」ではありませんが、ざっくり言えばどの程度の音刺激を「心地いい」と感じるかに個人差があるのは確かです。実際にいろいろ試してみて、「落ち着く音量・ジャンル」を探ることが大切かもしれません。

■ BGMハックのまとめ:自分に合った音環境を見つけよう

最後に、イラスト制作をはかどらせるための“BGMハック”ポイントを整理します。あくまで傾向なので、あなたの作業スタイルに合わせてカスタマイズしてみてください。

作業工程ごとに音を切り替える
アイデア出し・構図決め・資料チェック:なるべく静か、もしくは歌詞なしBGM推奨。ここでうっかりセリフや会話が耳に入ると、思考が中断されやすい。

線画・塗りなど反復作業:好きな曲でテンションアップしたり、飽き防止にラジオやトーク番組を流すのも◎。ただし初見ドラマや集中しすぎる内容はほどほどに。

音楽を「聞く」より「流す」スタンス
作業BGMはあくまで背景。もし「曲に集中してしまう」「気づいたら歌詞を追っている」という場合は、BGMが主役になりすぎ。インストや環境音、あるいは馴染みのある曲を低めの音量で流す程度にとどめましょう。

「音があると捗る」「無音じゃないと集中できない」「好きなアニメを流すと手が進む」「初見の映画だと逆に描けない」……。イラストレーターたちのリアルな声を振り返ると、“作業用BGM”の最適解は一人ひとり違うという事実を改めて感じます。さらに、作業内容(アイデア発想 or 単純作業)や描き手の性格(外向 or 内向)によっても好ましい音環境は変わるもの。

R11Rのアンケートから得られた意見は「9割以上が何らかのBGMを使い分けている」という実態でしたが、そこには「多くのクリエイターが音を上手にコントロールしてモチベーション・集中力を高めようとしている」背景があります。少しだけ覗いた科学的見解でも、言語情報の負荷や刺激量をコントロールすることが重要であることが示唆されています。

結局のところ、自分の制作スタイルに合った音の選び方こそが“BGMハック”の本質といえそうです。特に「アイデアを練る工程は静かに」「着彩では好きな音楽でテンション上げる」「苦手な雑音は遮断」といったメリハリをつけることで、効率とクオリティを両立できるはず。音楽や音声コンテンツをうまく使いこなし、ぜひあなたならではの心地よい“作業空間”を作り上げてみてください。

新しいBGMを試すたび、意外な集中力や発想が湧いてくるかもしれません。もしかすると、あなたが次に描く一枚は、今までにない最高の仕上がりを見せてくれることでしょう。自分にしっくりくる音環境が、あなたの画力とモチベーションをさらに引き上げてくれることを願っています。

虎硬

絵を描いたり文を書いたり。

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