ニコニコ超会議の4回目の開催となり、多くのファンが詰めかけている「超絵師展2026」。今年は幻となった「2024年ツアー」の100作品と新規40作品を合わせた過去最大規模となる140作品が会場を彩りました。今年もセゾンテクノロジー、ドワンゴ、そしてR11Rの協力企画として開催しました。

同じボカロ楽曲をテーマにしながらも、クリエイターによって全く異なる解釈が生まれるこの展示。ボカロファンはもちろんのこと、通りすがりの方も次々と展示に列をなしている姿は超絵師展の吸引力を感じさせます。
連日お昼前には即完売してしまうグッズの数々や、熱狂を生む展示空間は、一体どのようにして作られたのでしょうか。
今回はR11Rが運営するオウンドメディア『でみたす!』編集部の鈴木が、今年から新たにドワンゴ側の企画担当に就任した堤さんに直撃インタビュー。華やかな展示を根底で支えた地道な調整や、R11Rとのタッグだからこそ実現した緻密な進行、そして今だからこそ輝く「クリエイターの作家性」について、たっぷりとお話を伺いました。
幻の100作品が2026年に復活。担当者のボカロ愛が炸裂した超絵師展
──── 今年の超絵師展も、熱気に溢れていますね! 堤さんは今年から企画担当に就任されたとのことですが、どのような経緯でこのポジションに?
実はまだ入社して半年ほどなんです。前職でイラストや漫画のディレクションを10年以上やっていて、「イラスト系のディレクションが得意です」という話をしていました。
そうしたら面接の段階で「超絵師展という企画があって、ぴったりだから任せたい」と言っていただきまして。入社してすぐに引き継ぎを受け、そのまま走り出した形です。
図録を読んで初めて知ったのですが、今回でなんと第10回目の節目なんですよね。

──── 今年は展示枚数が140枚と過去最大ですが、これにはどんな意図があるのでしょうか?
今回は、例年とは少し違って、全作品新規描き下ろしというわけではないんです。というのも、うち100作品は 2024年に開催予定だった超絵師展ツアーで使用する作品でした。
2024年の作品もクリエイターさんの愛情がこもったアツい作品ばかりなので、ぜひ今回、来場者の方々にも見ていただきたくて。新規描き下ろし40点を加えて、2026年は豪華な140点の展示となりました。
クリエイターさんによっては2024年バージョンをそのまま展示している方や、リメイクを加えている方もいらっしゃるので、イラストファンの方々にも絵柄の移り変わりを楽しんでもらえる面白い内容になったのではと思っています。

──── バッググラウンドを知ると、作品がさらに面白くなりそうですね。今回、堤さんご自身で選定された楽曲もあると伺いました。
通常はメジャーなレジェンド曲と最近の流行り曲をバランスよく選定するのがテーマなのですが、今回はどうしても自分がやりたい曲を提案させてもらいました。
私が学生時代に心から大好きだった『サイハテ』と『君の体温』です。今まで超絵師展で使われていなかったと聞いて、「絶対にこれを入れたい!」と熱望しました。実際に上がってきたイラストを見たときは、本当にどの作品も素晴らしくて感激しましたね。
誰もが知っている魅力的な楽曲はもちろんですが、これからは誰かの「好き」を掘り下げた楽曲もどんどん採用していきたいなと思っています。

140作品を一括管理。提案力と進行力が生んだ反響の数々
──── ドワンゴさんが超絵師展の土台を作ってくださった裏で、イラスト制作の進行は我々R11Rが担当させていただきました。率直に言って、やり取りはいかがでしたか?
感謝では言い表せないほどに助けられました。2024年ツアーの100作品に関しては、当時の作品をそのまま再掲される方や「少し調整したい」と加筆修正される方もいらっしゃいました。
R11Rさんは複雑なスケジュール管理を、少ない担当者数で見事に行ってくれました。不可能を可能にしているR11Rさんのスケジュール管理能力の高さには、今回本当に驚かされました。

──── グッズ制作の方でも、ドワンゴとR11Rはかなりに密に連携を取っていたのだとか。
グッズに関してはR11Rさんの提案力が爆発していました(笑)。まず、今年の全体のテーマを「キラキラ」にしようと提案してくれたのもR11Rさんです。
R11Rさんが制作したキービジュアルの幾つかの案のなかで、キラキラをテーマにしたものが、運営の中ですごく良い案だとなって。グッズ全体の統一テーマに落とし込むことになりました。

──── グッズは連日、お昼前には完売してしまうほどの人気ぶりでしたね。
特に缶バッジは本当にクリエイティブが細かかったです。ただ全体を光らせるのではなく、イラストごとに「ここは背景」「ここは髪の一部」というように、グリッターを入れる場所を細かく指定して変えてもらっているんです。缶バッチのデザインもR11Rさんにお願いしたのですが、デザイナーさんがかけてくれた労力には頭があがりません。

また、図録の表紙もこだわりました。タイトルの箔押しはこちらから指定したのですが、デザイナーさんからの提案で「キャラクターの涙の部分」にも箔押しを入れてくださって。これが本当に良いアクセントになっています。

──── ポストカードのデザインも途中で変更になったそうですね。
そうなんです。当初、私は単純にお気に入りのイラストを1枚ずつピックアップして、ポストカードセットにして売ろうと考えていました。でも途中でR11Rさんから「せっかくの『絵師展』なのだから、1楽曲に対して描かれた4つの作品を、1枚のポストカードにまとめてデザインしませんか?」という提案をいただいたんです。

──── 単体のキャラクターグッズではなく、あくまで「展示会のグッズ」としての文脈を持たせたんですね。
その通りです。1枚のイラストだけなら絵師展のグッズである意味が薄れてしまいますが、4人の解釈が1枚に並んでいることで、一気に絵師展らしい特別なアイテムになりました。本当に「良すぎ!」と唸りましたね。

ボカロPの「裏設定」まで見せる展示
──── 今回の展示を見渡して、特に「ここを見てほしい!」というポイントはありますか?
同じ楽曲から生まれる「解釈の多様性」です。例えば『君の体温』ですが、担当してくださった4名のクリエイターさんが、見事に全員違うアプローチで描いてくださいました。中には男性キャラクターを描いてくださった方もいて、「この曲で、この解釈の絵が出てくるんだ!」と本当に面白かったです

作品をじっくり拝見して、添えられたクリエイターさんのコメントを読むと、すべての作品に対して「なるほど、そういう捉え方か!」と深く理解できました。自分の想像力の外にある、新たな発想に出会えることは、超絵師展の醍醐味だと思っていますね。
──── 今年は展示方法にも新しい試みがありました。r-906さんの『匙ノ咒』のブースには、通常とは異なるタイプのオーダーシートが掲示されていましたね。
こちらは今回初の試みです。通常、クリエイターさんには「オーダーシート」という形でコメントをいただくのですが、r-906さんはご自身がイラストを描くにあたって当時本当に書き留めていた「設定メモ」や「世界観のテキスト」をそのまま送ってくださったんです。

──── ファンからするとたまらない貴重な資料です。
私としてもどうしても皆さんにお見せしたく、「ぜひこのまま展示させてください」とお願いして、展示することになりました。SNSなどでも「面白い!」と非常に反響が大きかったですね。
今はAIを使えば、ある程度綺麗なイラストが簡単に出力できてしまう時代です。だからこそ、完成した一枚の絵の裏にある「思考プロセス」や「細かい設定」、クリエイターの体温のようなものを表に出していくことが、作品の重みや価値を伝えるために不可欠だと感じています。
来年以降も、こういった「裏設定」や「コンテクスト」を一緒に展示する見せ方はどんどん増やしていきたいですね。

イラストは五感で楽しむ時代へ。超絵師展が目指す未来の展示体験
──── 最後に、気が早いですが来年以降の「超絵師展」で挑戦してみたい野望があれば教えてください。
実は今年の展示、楽曲の並び順に「隠されたテーマ」があるんです。展示されているイラスト(楽曲)は、大きく3つの「ムード」に分類されて並んでいます。最後は可愛い曲調で終わるようにまとめているのですが、この設定は、会場のどこにも出していない情報なので、誰も気づいていないと思います(笑)。
──── そうだったのですね!楽曲順にも理由があると知ると、展示の見方も変わってきそうです。
今後はただ四角いパネルを並べるだけでなく、プレイリスト順に曲を聴きながらブースを周れるような、没入感のある導線を作りたいです。
今は楽曲サービスと提携しているのですが、まだまだ「聴きながら見る」動きには繋がっていない体感があります。ただイラストを見るだけの展示ではないというところを、運営としてももっと推していきたいという思いがありますね。
そしてもう一つの大きな野望が、「香り」の演出です。
──── 香り、ですか?
実は、前職で化粧品などを開発する会社にいたことがあるんです。香りが人間の記憶や感情にどれだけ強く結びつくかということを、実践しながら学んできました。
美術館のように真っ暗な防音室でヘッドホンをつけて……という展示は超会議の人の多さでは難しいですが、空間に「香り」を漂わせることならできるはず。
例えば、先ほどお話しした「3つのムード」ごとに、その雰囲気に合った香りを調香してブースを分ける。視覚(イラスト)と聴覚(楽曲)に、嗅覚(香り)を結びつけることで、来場してくださった皆さんの記憶に、より鮮明に焼き付く体験を作れるのではないかと考えています。
──── それは最高に面白いですね! その香りをグッズとして持ち帰れたら、自宅でも展示の余韻に浸れそうです。
そうなんです。香りって記憶と強く結びつくので、グッズ展開ともすごく相性が良いんですよね。来年以降はイラストと音楽に加えて、もっと『五感で楽しめる』空間を作っていきたいです。

クリエイターの皆さんがお忙しい中、魂を込めて描いてくださった作品の魅力を最大化して届けるのが私たちの役割ですから。まだまだやりたいことはたくさんあるので、これからもR11Rさんと一緒に、新しい展示の形を実現させていきたいですね。
──── 次世代の展示体験、今から非常に楽しみです…!!本日はお忙しいところ、ありがとうございました!