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ニコニコ超会議2026で開催された「超絵師展 ~IFの楽曲世界展~」は、ボカロPが当時絵師へ伝えたオーダーシートをもとに、参加絵師がボーカロイド楽曲を新たな解釈で描き下ろす展示企画です。2026年は総勢140名が参加し、1楽曲につき4名の絵師がそれぞれの「IF」を描きました。
イラストレーター・REAさんが制作した「IFの世界」は、dorikoさんの『ロミオとシンデレラ』。小学生の頃から聴いてきた曲を、いま自分の絵として描く。その作品を見て、ボカロPであるdorikoさんは何を感じたのでしょうか。
今回でみたす!では、dorikoさんとREAさんの対談を実施。イラストの制作秘話から、『ロミオとシンデレラ』の成り立ち、制作時のこだわりまで、じっくり語ってくれました。展示を見た人も、これから知る人も、作品の見え方が変わる対談です。

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小学生の頃から聴いてきた『ロミオとシンデレラ』を描く日が来た
────「超絵師展」へのご参加ありがとうございました。今回の企画に参加しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
doriko:超絵師展には、2023年、2024年、2026年に楽曲として参加しました。自分の楽曲の解釈を、いろんなイラストとして鑑賞できる企画と聞いて、「もうやるしかないでしょ」と。自分にとっても、様々な解釈に触れる時間が好きなので、二つ返事で参加を決めましたね。
REA:私は2026年に『ロミオとシンデレラ』で初めて参加しました。以前から、超絵師展には出てみたいと思っていたんです。お話をいただいたときは私も「やるしかない」という感じでした(笑)。断る理由がなかったです。

────REAさんは『ロミオとシンデレラ』に対して、どのような思いを持って作品に向き合われたのでしょうか。
REA:『ロミオとシンデレラ』は小学生の頃から好きで、ずっと聴いてきた曲でした。自分がこの曲のイラストを描くことになるとは思っていなかったので、描かせていただけると決まった時は本当に嬉しかったです。
制作にあたり、改めて「イラストを描く」という視点で聴くと、ただ歌詞と音楽があるだけではないと感じたんです。曲のなかに、人生の中のある期間や、その時期に抱えている感情が見えてくるような気がして。音だけではなく、目に見える感覚があったんです。
だから、絵も視覚だけの体験では終わらせたくありませんでした。触ったときの音、質感、湿度、空気。普通なら視覚だけでは伝わりにくいものまで、絵を通して感じられるようにしたくて、時間をかけて描きました。
doriko:すごくリスペクトを持って接していただいているのを感じて、とても嬉しいです。
────dorikoさんは、REAさんの作品をご覧になって、どのように感じましたか?
doriko:まず迫力がありますよね。『ロミオとシンデレラ』にはもともとのイラストがあるので、僕にはどうしてもその印象が最初についてしまうんです。でもREAさんの作品は、まったく別の作品として見られるくらい力がありました。
特に僕はガラスの靴とミクちゃんの表情が素敵だと思っています。正直、楽曲のイラストというより、一枚の芸術作品ですよね。もし僕がこのイラストに合わせて曲を作るとなったら、「絵に食われてるよ」と言われてしまいそうです(笑)。そのくらいパワフルな作品を作っていただきました。

────REAさんは、『ロミオとシンデレラ』のどんなところに惹かれていたのでしょうか。
REA:歌詞も曲も含めて好きなのですが、どうしてそんなに惹かれるのか考えたときに、この曲のミクちゃんは、ひとりの女の子として実在感を持っているように感じたんです。
歌詞にはお父さんやお母さんが出てきますよね。親のもとで暮らしているけれど、身体も心も大人に近づいている。その葛藤がすごくリアルで、実在する女の子の曲のように思えました。そこに人生の一部が見えるところが好きなんです。
doriko:まさに、REAさんがおっしゃっていたことが僕が『ロミオとシンデレラ』内でやりたかったことで。僕自身、当時そこまで整理して考えていたかはわかりませんが、この曲ではミクの歌というより、一人の思春期を迎える女の子の歌として表現したかったんです。
周りの門限が厳しい女の子の友達の話などを参考に、『ロミオとジュリエット』のオマージュも含めて、リアルな感情を表現できるように制作していましたね。

徹底的な聴き込みと理解から「IF」は生まれる
────「超絵師展」では、ボカロPからのオーダーシートをもとにイラスト作品を制作します。今回のオーダーについては、どのように振り返っていますか?
doriko:今振り返ると、自分はオーダーシートに結構希望を書いていたんです。せっかくならもっと自由にお願いすればよかったと思っています。“IFの世界”を楽しめるこの企画なら、全てイラストレーターさんにお任せして、曲を聴いて自由に描いていただいてもよかったのかなと。
REA:今回、私は充分自由に描かせてもらった感覚があります(笑)。制作序盤、曲を聴きながら自分なりの解釈を膨らませて、何を描くかを考えていました。

REA:ラフの段階で改めてオーダーシートを確認したとき、dorikoさんからのオーダーと自分の解釈が同じ方向を向いていて、とても嬉しい気持ちになったのを覚えています。だから、dorikoさんが自由な解釈でいいとオーダーシートに書いてくれていたとしても、きっと同じ絵になっていたと思いますね。
doriko:本当に『ロミオとシンデレラ』を深く聞き込んでくれて嬉しいです。
REA:昔から聞き込んでいた曲ではあったのですが、製作中はより何度も何度も繰り返して聞きました。クリエイターとして、曲の理解を深めないと良いアウトプットはできないと思うんです。
大好きな楽曲だからこそ、自分の最大限を出したいと思って描きました。超絵師展に参加しているクリエイターは、みんな同じ気持ちで描いていると思います。
doriko:これこそ音楽家冥利に尽きる言葉ですね。自分の楽曲が、こんなにも人に伝わっていると知れると、本当に作ってよかったと思います。

────REAさんのイラストでは、初音ミクがかなり「生きている人」として描かれている印象がありました。
REA:ミクちゃんは人間ではないですし、そのイメージで歌っている曲もありますよね。でも『ロミオとシンデレラ』には、親がいて、人生がある。だから鼻の穴は絶対に描きたいと思いました。リアル調の絵柄ですが、横顔だと鼻の穴を描かないこともできるんです。ですが、この曲のミクちゃんは呼吸していそうだなって。

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doriko:今回曲を作るとき、初音ミクの曲ではあるんですけど、「初音ミクは歌っているけれど、初音ミクの曲じゃない」というところに最初はこだわっていた部分があります。そういう意味では、今回の鼻があって、もっとリアル寄りの姿として見ていただいた方向は、その通りだなと思います。
REA:こだわっている部分は他にもあって。実は画面右下を見ていただくと、キャミソールの紐が見えているんですよね。

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doriko:MVの衣装だ!!
REA:まだあまり人には気づかれていない部分ですが、元のイラストも大好きなので、要素を忍ばせています。
doriko:すごく愛を感じますね。嬉しすぎます。
doriko、REA創作のこだわりとは
────dorikoさんは『ロミオとシンデレラ』を制作していた当時、どんなところにこだわっていたのでしょうか。
doriko:この曲の場合、特定の音というより、歌詞を含めた全体の雰囲気をどう作るかにこだわっていました。暗い曲調でありながらアップテンポな曲は、それまで自分では作ったことがなかったので、自分の曲として受け入れてもらえるのか、手探りの状態で出した楽曲でもあります。
この曲を作っていた頃と今とでは、音楽制作への向き合い方がかなり違っていて。当時は、音楽作品を発表してミュージシャンになりたいという感覚ではなく、本当に学生の趣味に近い気持ちで作っていたんです。
ただ、『ロミオとシンデレラ』を出す少し前くらいから、聴いてくれる方が増えてきていて。せっかく聴いてくれる方が多いなら、下手なものは出せないなと思って、自分が納得できるクオリティを追求しだしたのがこの時期でした。

────今にも続いている、ご自身のこだわりはありますか?
doriko:細かい話をすると、アドナインスと言われる音があります。『ロミオとシンデレラ』は、その音ばかりが鳴っている曲なんです。僕はこの音がすごく好きで、今作っている曲でもマイナー、アドナインスの響きをよく使っています。
楽曲冒頭、同じ音が続いているところがあるんですけど、それがマイナー、アドナインスの音なんです。こだわりかと言われるとわからないんですけど、もう自分のアイデンティティだと思って、今でも使いまくっています。
編集注:「ドミソ」のような3和音に、1オクターブ上の「レ」(=9度の音)を1音足しただけのコード(C→Cadd9)。たった1音で、響きに透明感と切なさが加わる手軽なおしゃれコードです。
────REAさんにも、表現においてこだわりの部分はありますか?
REA:表情ですね。これはイラストでも絶対にこだわりたくて。ここのお肉が好きなんです(自分の頬を指さしながら)。

────笑ったときの、ほっぺたのあたりですか?
REA:そうです。少し口角が上がったときの微妙な起伏や、触ったらぷにっとしそうな感じが好きなんです。描いているときも気持ちいいんですよね。
目、鼻、口はパーツとして名前がついているので、初心者の頃から意識しやすいんです。でも描けば描くほど、名前がついていない部分の表現が大切になってくる気がしています。自分の顔を見て「あ、面白いな」と思うところは、イラストでも大切にしています。

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────肌の表現も、かなり細かく色が重なっていますよね。
REA:最初は大きく影をつけて、立体感を取ります。そこから、皮膚の下にあるものまで感じられるように、血管の色や肌のムラ、黄色や青を少しずつ乗せていきます。描いて、離れて見て、違うと思ったら直す。正解があるようでないので、とにかく探りながら描いています。
doriko:肌って、もっと単純に肌色を置くものだと思っていました。そんなにいろいろな色が入っているんですね。
REA:私も、最初から今の描き方だったわけではないです。美術館で西洋絵画を見たときに、肌の中にいろいろな色がある感じがすごく好きになって。『ロミオとシンデレラ』にも、童話や西洋絵画の少し暗い空気があると思っていたので、そこは自然につながった気がします。

知識量と良い作品は比例するのか
────dorikoさんは、もともとどのようにボーカロイドで楽曲制作を始められたのでしょうか。
doriko:学生時代に、趣味の範囲でバンド活動や作曲をしていました。ちょうどその頃に『初音ミク』が発売されたんです。
当時、素人にとってボーカルを入れるのは本当に難しかったんです。歌を録って、音を整えて、みんなが聴き慣れている完成形として一曲仕上げるのは、かなりハードルが高かった。そこに初音ミクが出てきて、ボーカルまでパソコンの中で打ち込んで完結できるようになった。個人的にはかなり革命的でした。
試してみたら、思っていた以上に多くの方に聴いていただけました。それまで、誰かに曲を聴いてもらう経験がほとんどなかったので、「え、楽しいな」と思ったんです。

────『ロミオとシンデレラ』は、dorikoさんにとって転機でもあったのでしょうか。
doriko:たくさんの方に聴いていただけて、そこからいろいろなことが始まった感覚はあります。この曲を出した頃から、同じく初音ミクの曲を作っている方々と交流する機会が生まれて、活動の幅も少しずつ広がっていきました。
結局のところ、人との繋がりかなという部分はあります。その楽曲をきっかけに、知り合いの知り合いみたいに少しずつ広がっていって。学生時代は人との関係が希薄だったんですけど、ボーカロイドで知り合ってからの人は、同じことを好きな方々なので話が合うんです。そういった出会いはすごく大きかったですね。一生のお付き合いになっている気がします。
────dorikoさんは、ご自身の技術向上のために続けていることはありますか?
doriko:勉強というと大げさかもしれませんが、感銘を受けた曲の分析は続けています。新しい発見はもちろんですが、何より自分に足りない知識や技術がわかるからです。僕は、音楽を真剣に学んできた人に対するコンプレックスから始まっている部分があるので、技術や理論は今も勉強中です。
ただ、音楽はそれだけではないとも思っています。上手いか下手か、複雑かどうかだけではなく、究極的には好きか嫌いか。「いいな」「なんかわからないけどいいな」と思ってもらえるかどうかだと思うんです。誰かひとりでもそう感じてくれる曲を作れたら嬉しいです。
『ロミオとシンデレラ』の頃は、初めて他の方にギターを弾いてもらった時期でもありました。自分では弾けなかったのでお願いしたのですが、「ここのコードは何ですか?」と聞かれて、「わかりません」と答えたんです(笑)。

だから、その頃から改めて勉強を始めるような感覚でした。勉強したから聴いてくれる方にとって曲が良くなったのかと言われると、また別の話かもしれません。ただ、自分の中では、昔作りたいと思っていたクオリティに近いものが、ここ5年くらいでやっと作れるようになった感覚はあります。
────REAさんは、今後の制作で磨いていきたいものはありますか?
REA:最近、少し描けないかもと思う時期があったんです。画力については、デッサンの練習もたくさんしてきましたし、いわゆる「絵が上手い」というところは、ある程度クリアしていると思っています。でも、その先に行くには画力だけでは足りないと感じていて。
私は逆に、デッサンや正解を学びすぎた部分を少し崩したいんです。ここは本当はこうならない、と思いすぎると、絵が面白くなくなってしまう気がして。だから、デッサン的な正しさだけではなく、自分の手ぐせや、二次元だからできる表現も大事にしていきたいです。
いろんな人と関わって、ちゃんとすごい人の何がすごいのかを考えて、それを自分にも反映させていきたいです。絵を見て、試して、変わっていくことを怖がらずにいたいですね。

────改めて、REAさんにとって『ロミオとシンデレラ』はどんな曲ですか?
REA:小学生の頃に聴いたボカロ曲の、たぶん3曲目くらいが『ロミオとシンデレラ』でした。聴いていなかったら、今ここにいないだろうなと思います。ボカロ文化に深く興味を持ったきっかけでもあって、私のボカロに対する価値観を形作った親みたいな存在です。創作活動における青春時代を作ってもらいました。
doriko:僕もなんだか親のような気持ちですね(笑)。『ロミオとシンデレラ』は、これまで僕自身もたくさん聴いてきましたし、いろいろな形でたくさんの方に聴いていただいた曲でもあります。
だからこそ、『ロミオとシンデレラ』を愛してくださった方々に、また新しいものや違った面も出してみたいという気持ちはあります。僕らしさは残しつつ、「またdorikoがなんかやってるな」と、新鮮な気持ちでいろんな作品に触れてほしいですね。

────REAさんは、もし次に参加するとしたら、どんな絵を描いてみたいですか?
REA:テーマみたいなものは、あまり描くまで決めないようにしています。私は、自分が考えていたことと何かが偶然出会って、やっと絵が描けるんです。それまでに「こういうのを描こう」と決めてしまうと、あまり自分の納得できる仕上がりまで行けないんですよね。
もし次に参加させていただけるなら、担当の曲が決まってから、曲をいっぱい聴いて、自分の日常生活のいろいろなものと重なったときに、その時にしかできない表現をしたいです。超絵師展を訪れた方をまた新鮮に驚かせるような作品作りがしたいですね。