R11Rアワード取材写真
創作で満たす

描く力だけじゃない。バンタン「R11Rアワード」が生徒に問う、“展示をつくる力”

2026.07.23
  • 鈴木樺恋

  • 虎硬

  • でみたす!編集部

目次
INFORMATION
でみたす!
本記事は、バンタンデザイン研究所で行われた「R11Rアワード」オリエンテーションと、イラストレーター・漫画家の朝際イコさんによる座談会をでみたす!編集部が取材したレポートです。

「あなたなら、どんな展示をつくる?」

そんな問いから始まる、バンタンの生徒に向けた「R11Rアワード」オリエンテーションと座談会が開催されました。

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バンタンデザイン研究所は、イラストやデザイン、映像、ファッションなどのクリエイティブ分野を学ぶ専門スクール。R11Rアワードは、クリエイティブスタジオR11Rとバンタンが連携し、生徒がプロの現場に近い課題へ挑戦するための企画で、今回は「展示をどうつくるか」まで考えるイラスト部門として実施されています。

2026年6月、授業後の教室を利用して行われたのは、R11Rアワードのオリエンテーション&イラストレーター・漫画家の朝際イコさんを招いての座談会。今回はその一部始終をでみたす!編集部が余すことなくお届けします。

今回の課題は、自分だけの展示をつくる

今回の課題は、ただ1枚のイラストを描くことではありません。生徒の皆さんは“イラスト展示のプロデューサー”として、自分だけの展示タイトルやテーマ、世界観を考え、その企画を象徴するキービジュアルを制作します。

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つまり本アワードでは描く力だけではなく、考える力も必要になってきます。

誰に届けたいのか。どんな体験をつくりたいのか。なぜその表現でなければならないのか。イラストレーターやデザイナーが仕事の現場で向き合っている問いに、学びの段階から実践的に考えることのできるアワードです。

作品を「完成させる」だけでなく、見る人がどんな順番で作品に出会い、何を感じ、どんな気持ちで帰っていくのかまで想像する。今回の課題は、生徒の皆さんにそうしたリアルな現場視点を与えるものでもありました。

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オリエンテーションでは、R11Rがこれまで手がけてきた「Emotions」シリーズや「浮世東京」、ニコニコ超会議で展開される「超絵師展」など、大型イラスト展示の事例も紹介されました。R11Rは、SNSを中心に活躍するイラストレーターやアニメーターなど、1,000名超のクリエイターとパートナーシップを結ぶクリエイティブスタジオ。企業・ブランドの課題解決から大型展示まで、クリエイターの才能を社会へ接続するプロデュースを行っています。

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そして今回、最優秀賞者1名には「R11R掲載クリエイターへの登録資格」が授与されるとのこと!在学中から自分の才能を直接アピールできる、貴重なチャンスになりそうです。

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前回開催とは少し趣向も違った今回のR11Rアワード。オリエンテーションでは、生徒の皆さんはどんな話を聞き、どんな作品を思い描いたのでしょうか。

「ここでしか食べられないラーメン屋になれ」朝際イコさんが語る、プロになるための戦略とは

アワードの説明に続いて登壇したのは、イラストレーター兼漫画家の朝際イコさん。レトロポップな女の子を描く「ネオ大正浪漫」の世界観で知られ、SNSでも多くの支持を集めるクリエイターです。

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30歳からイラストレーターに。案件獲得を支えたルーティンとは

ただ、その道のりは美術系の学校からまっすぐ始まったものではありませんでした。生徒時代は外国語学部で学び、19歳からはインディーズバンドの活動に熱中。生活を支えるために保険会社で働きながら、バンドのグッズやフライヤー、MV制作を通して独学で絵のスキルを身につけていったそうです。

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朝際さんが本格的にイラストレーターとして活動を始めたのは30歳のころ。そこで最初に立てたのが「1年でフォロワー1万人」という、かなり具体的な目標でした。そのために行ったのが、毎日「ネオ大正浪漫」の女の子を描いて投稿すること。気分が乗った日にだけ筆を取るのではなく、描くことと発信することを生活の中に組み込み、続けるための仕組みにしていったといいます。

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印象的だったのは、「モチベーションに頼らない」という考え方です。やる気は日によって揺れるもの。だからこそ、やらないと落ち着かないくらいまで行動をルーティン化する。

朝際イコさんも、発信を始めたきっかけには、「見てもらいたい」という素直な気持ちもあったそうです。しかし、それを諦めずに継続していけば、誰にも負けない実績になるのだと語っていました。

「ここでしか食べられないラーメン屋」を目指せ

そして、会場でも生徒の皆さんの反響を呼んだのは。ユニークな作家性を持つことと、誰でもできることを当たり前にやる、ということの両立のお話です。

朝際イコさんは、活動の中で何でも器用に描ける人を目指すより、「ここでしか食べられないラーメン屋」のような存在になることが大切だったと答えています。つまり、「大正浪漫といえば朝際イコ」と思い出してもらえるような、自分にしか出せない味を持つこと。作家として選ばれるためには、尖った世界観を磨き続ける必要があるのだそうです。

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一方で、企業案件などのクライアントワークでは、自分の描きたいものを押しつけないことも大切だといいます。イラストレーターは制作工程の一部を担う仕事でもあります。納期を守ること、返信を早くすること、いつも機嫌よく働くこと。

保険会社時代に身につけたという、社会人としての当たり前のマナーが、イラストレーターとして継続的に案件をいただく秘訣になっていると語っていました。

イラストには関係ない知見があなたの味になる

そして、作品の奥行きをつくるものとして、朝際さんが勧めていたのが、絵以外の知識を蓄えること。アニメや漫画の流行だけではなく、歴史、宗教、民俗学など、一見イラストと関係なさそうなものを知ること。それらが、自分だけの世界観を支える柱になるのだといいます。

実際に、朝際イコさんが行った初めての個展では、宗教や祈りをテーマに据え、会場に本物の賽銭箱を設置し、集まったお賽銭を寄付する企画を行ったそうです。自分の「好き」をどう見せるか。どう体験として成立させるか。朝際さんの話は、今回のアワードが求める「展示企画者として考える」というテーマとも、重なる部分がありました。

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生徒の皆さんが受け取ったこと

座談会後、生徒の皆さんに話を聞くと、それぞれの中に残った言葉は少しずつ違っていました。けれど共通していたのは、朝際さんの話を「すごい人の成功談」として遠くに置くのではなく、自分の制作やこれからの活動に引き寄せて受け取っていたことです。

取材に協力していただいた5名の生徒の声をお届けします。

うすにしさん

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オオトリ60さん

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あさだまるさん

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なかじまけんとさん(グラフィックデザイン&イラスト)

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シグさん(高等部 イラスト専攻)

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生徒の皆さんが受け取っていたのは、単なるテクニックではありませんでした。毎日投稿をどう続けるか。自分の世界観をどう磨くか。仕事として信頼されるには何が必要か。そして、自分の好きなものをどう企画として立ち上げるか。朝際さんの話は、それぞれの迷いに、具体的な言葉を与えていたように感じます。

クリエイターは経験を問わず皆同じ土俵で戦っている

座談会を終えた朝際イコさんにも、感想を伺いました。

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「自分より若い方が多い中で、そういった方々が今後同じフィールドで戦っていくのだと思うと、偉そうにはできないなと思いました」

朝際さんは、漫画家・浦沢直樹さんから聞いたという「新人でもベテランでも、同じ白い紙に向かっていたら同じだから」という言葉を紹介しながら、今回の座談会でもまさにその感覚があったと話します。

長く活動しているから偉いわけでも、始めたばかりだから弱いわけでもない。目の前にある白い紙に、これから何を描くのか。その一点では、全員が同じ場所に立っている。同じ土俵で戦う仲間であり、時にはライバルでもある存在として、これからの皆さんの活躍が楽しみになったと笑顔で話してくれました。

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R11Rアワードについては、今後、実在の企業とコラボレーションした企画なども面白いのではないかと話していました。

「たとえば、ペットボトルのデザインや、期間限定のお茶のパッケージができたら面白いなって。もし作品が実際の商品になれば、それは制作のモチベーションになるだけでなく、作家としての実績にもなるはずです。」

自分の好きなものを描くこと。誰かに届く形に整えること。仕事として求められる条件を理解すること。そのどれかひとつだけではなく、複数の要素が重なったところに、クリエイターとしての活動は立ち上がっていきます。

ぜひ、R11Rアワードを単なる課題としてではなく、社会とアートの繋がりとして捉えてほしいと熱く語っていただきました。

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バンタン・スクールディレクターの風見さんからもコメントが!

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今回のオリエンテーションで司会を勤めていただいたスクールディレクターの風見さんからも、今回の感想やR11Rアワードへの意気込みコメントが到着しました!普段から生徒の活動を一番近くで見ている風見さん。非常にあたたかな言葉を紡いでいただきました。

コメント

今回のオリエンテーション・座談会では、ゲストの朝際イコ様とR11R・森様のトーク内容がとても勉強になりました。

プロのイラストレーターを目指している生徒たちも、前のめりで集中して話を聞いている様子が印象的でした。

特に、朝際イコ様がどのような経歴でイラストレーターになられたのかというお話も、生徒にとって非常に刺激になったと思います。

なかでも、朝際様の姿勢として、「絵が上手い」だけではなく、日頃からの様々な分野に興味を持って新しい知識を吸収し続けることや、周りの知人・友人などのご縁を日頃から大切にすることが、長く活躍するために重要だというお話がとても印象に残りました。

座談会では、朝際さんご自身のお人柄の素晴らしさや魅力を感じ、「この人にぜひ仕事をお願いしたい」「一緒に仕事がしたい」と思ってもらえるイラストレーターさんの理想像を感じました。

特に、「自分が好きで興味を持ったことについて掘り下げることが勉強だと思う」という言葉がとても心に残っています。好きなことを探究し続ける姿勢こそが成長につながるというメッセージは、とても感動しました。将来プロを目指す生徒にとっても、技術だけではなく、人間力や人柄も大切であることを学べる貴重な機会になったと思います。

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今回で3回目となる取り組みですが、毎年このような貴重な機会をいただき、今年は「R11R掲載クリエイターへの登録資格」というさらに豪華な最優秀賞プライズまでご用意いただいていることに、改めて感謝しております。

回を重ねるごとにプロジェクト全体のテーマや求められるレベルも高くなっており、それに挑戦する生徒たちも毎年大きく成長しているように感じます。ぜひ今年も本プロジェクトを通して、多くの生徒が挑戦し、実践的に学び、大きく成長していくことを期待しています。

これから生まれる、まだ見ぬ才能たちへ

オリエンテーションの終了後も、教室にはまだ熱が残っていました。生徒の皆さんも自分のアイデアを話してみたり、朝際イコさんに話しかける姿など、早速発想が膨らんでいる様子です。

誰かの言葉を聞いて、自分の制作を思い出す。まだ曖昧だったアイデアに名前をつけてみる。進路や活動の方向性について、少しだけ解像度が上がる。

そうした小さな変化は、作品の完成形だけを見ていてもなかなか見えません。けれど、作品が生まれる前には必ず、こうして自分のアイデアを練る時間があります。

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挑戦を始めたばかりの人と、長く第一線で活動してきた人。その間には、もちろん大きな違いがあります。経験、仕事の数、責任、見えている景色。その差は簡単に埋まるものではありません。

それでも、何も描かれていない紙の前に立つ瞬間だけは、誰もがひとりのクリエイターです。

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今回のR11Rアワードで、生徒の皆さんはそのキャンバスにどんな世界を描くのでしょうか。平成レトロの色彩か、電柱の影が落ちる昭和の風景か、ポップで柔らかなキャラクターか、不穏で大きな存在の気配か。

まだ形になる前のアイデアたちは、すでにそれぞれの個性が光っていました。

R11Rアワードは、9月の開催に向けて現在も応募を受け付けています。ぜひ参加を迷っているあなたも、新たな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

R11Rアワード概要

開催:
9月27日(日)
VANTAN FANS FES(in EBiS303)にて学内表彰式を開催予定

課題内容:
ーあなたなら、どんな展示をつくる?ー

あなたはイラスト展示のプロデューサーです。

もし、あなただけのイラスト展示を企画できるとしたら―

どんなテーマにする?誰に届けたい?どんな世界を見せたい?…

今回の課題は、展示企画者(プロデューサー)として考え、クリエイターとして描くこと。

あなた自身の展示企画を考え、その世界観を象徴する KVを制作してください。

鈴木 樺恋

『でみたす!』プロジェクトマネージャー・編集者。コンテンツの企画・製作を担当。画塾で絵を学んだ経験から、「描く側のニーズも満たすコンテンツづくり」を目指しています。

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